カテゴリ:美大受験( 10 )

きっかけ。

こんにちは。馬渡吟治郎です。

思えば、美術を本格的に始めてから14年。
過ぎてみるとあっという間ですねー。
元々剣道少年で、高校時代にゃ国体の代表のセレクションを
受けられるくらいには頑張ってましたね。
朝から晩まで、一年中、剣道剣道剣道…
でも、そん時には高校でたら美術に進むってのは決めてたんだよね。

きっかけは中学の卒業文集。
将来について書け、なんて言われてはじめて自分の今後を考えた15のオレ。
小3から剣道しかしてなくて、剣道しか考えてなくて、それが当たり前だった。
でも、そん時気付いたんだよね。剣道は死ぬまで選手じゃいられない。
指導者として生きて行く気はさらさら無かったし、リアリティーも持てなかった。
図工が好きだった。こいつなら体力関係ないし(実際はあるけど)
死ぬまで選手でいられるんじゃないか、とガキが思いついちゃったワケですよ。
とりあえず、美術の大学があるってのは知ってたから、決めました。
高校までは剣道、大学からは美術。
高校は剣道しに行くから、大学受験の勉強はしない、と。

で、高3の夏が終わり、部活を引退して美術の先生を訪ねたわけだ。
「美術の大学って、どこがあるんですか〜?」バカまるだし。先生答える。
「東京藝大ってとこが、一番いいとこだよ。」
どうせ行くなら一番良いとこだなと、東京学芸大学の募集要項を調べた
またもやバカまるだしのオレ。

先生の指摘で、上野に東京藝術大学ってのがあるのを知ったのは、
もう秋も深まってきたころでした……
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by g-mawatari | 2001-01-01 00:10 | 美大受験

はじまり。

なにはともあれ、芸大入試当日。
コートのポケットにプラスチック消しゴムと鉛筆2本、受験票を忍ばせて
国技館(大学内じゃ狭すぎて、一次の鉛筆デッサンは国技館で開催)に
いざ出陣…………なんじゃあ!!お前ら!!!
ほかの受験生、みんなナニやら詰め込んだキャリーをごろごろ。
え・鉛筆で描くだけじゃん。何持ってきてんの、みんな…
そう、皆さんこの試験の恐さを知っているのです。
この一次を通らんと、一年間試行錯誤してきた油絵を描かせてくれんのです。
数十本(多い人だと百本超)、数々の消し具、または禁止されてるような
秘密兵器をわんさとたずさえて、戦場入りするのであります。

無知のオレ、手ぶらでお散歩感覚ですわ〜。











……一次、受かってしまいました。
まさにビギナーズ・ラック。おもいっきり振ったら当たっちゃいました。
あるんです、芸大。
ズバリ、合格基準は「作家性」。課題に対して「うまい」じゃなく「いい」絵を
とるんです。この大学。つまりは、素人でもその日たまたま「いい」絵を描けば
通っちゃうんです。

ま、こんなもんだろと無知なオレ。
後日、二次試験で分かりました。絶対受からないって事を…
当時の自分は素人で、つまり目も肥えてないわけで。白黒のデッサンじゃ
絵の善し悪しは分からなかったんですね。
周りの皆さんの、カラーの油絵見て愕然。上手い、上手すぎる!!
オレ程度の「いい」絵なんてぶっ飛ぶくらい、レベルが違う。

晴れてリッパな浪人生になったオレは、やっぱ習わんとなぁと
近所のお絵描き教室に行ってみたわけ。そしたらそこのオバちゃん、
「受験するなら、お茶の水に美術の予備校があるわよ〜。」
愕然とする無知なオレ。そっか〜、これがヤツらの上手さの秘密か〜。

これが池袋の大手美術予備校を越して、お茶の水に通うことになった経緯。
そして地獄の三浪生活の幕開けだった———
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画像は2005「欲しいの。」展(ギャラリーエス・東京)に展示した
「まる(欲しいの。)」
制作年2005、サイズh25×w14×d21cm。
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by g-mawatari | 2001-01-01 00:09 | 美大受験

油絵。

そもそも、図工が得意で美術を志したわけで、油絵って決めてた訳じゃ
なかった。ようは、な−んにも分かってなかった。
大学にゃ、デザイン・油絵・日本画・彫刻・工芸・建築・映像・芸術学
などと色々な専攻があって、受験生は各自の希望や適正で科を選択して、
各受験課題に対して特化された授業を予備校で受けているわけだ。

ずばり、オレが油絵で受験をした理由、それは「道具をもってたから」。
高校の美術の授業で、油絵を二枚描かされた。油絵セット買わされた。
なんか、油絵って美術っぽいじゃ〜ん。…ん、彫刻もぽいなぁ。
当時のオレは油絵・彫刻・デザインのカテゴリーがあるのは知っていた。
(てか、その三つしか知らなかったんだが)
さあ、◯茶美に入学って時、油絵と彫刻で迷った。
デザインはリアリティーが持てず、ぽさが薄いのでパス。
(当時のオレです。今はそんなこと思ってません。)
え〜、彫刻もヘラとか買わんといかんのか〜。じゃ、道具のあるほうで…

入学して気付いた。オレの持ってる道具全然足りね〜。
え、油壺使わないの?みんなテレピンでっけ〜!!何本筆持ってんの!?
…別世界。なにお前等の絵、写真?くっさい。中毒になるぞ、みんな何で平気?

最初の課題は一次と同じ出題だった。自信満々に国技館で描いたのを描いた。
結果は最下段。とにかくレベルが違い過ぎる…
こりゃ、大変なとこ来ちまったわ〜。うかうかしてられんぞ。
よし、とりあえず夏までに上段に乗ってやる。勝負魂に火がついた。
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画像は2005「欲しいの。」(ギャラリーエス・東京)に展示した
「みよ」
制作年2005、サイズF10号。素材:パネル、紙、木炭、油彩。
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by g-mawatari | 2001-01-01 00:08 | 美大受験

戦闘開始。そして暗黒時代に…

浪人して、美術予備校に入学したオレは、まず夏までに上段に上がる決意をした。
まず、基本。いわゆるデッサン力。対象を理解する観察眼と言ったとこですか。
はい、皆無です。勝てません、絶対。
高校で「うまいね〜」なんて言われて調子乗ってた自分が恥ずかしい。

絵具ってのは、色の粉(顔料)と、それを画面にくっ付けるための糊で出来ている。
顔料をニカワでくっ付けりゃ日本画。アラビアゴムで固めりゃ透明水彩。
油で固めりゃ油絵と言うワケです。
で、この油の部分の種類とか調合とか変えてやったりすりゃ、様々な表情を出せる
って事ですね。大雑把に言やぁ。
ハマりましたよ、どっぷりに。正直デッサン力の無い素人の絵なんだけど、
デッサン力だけじゃないから。絵の良さは、なんて。
さんざ色んな素材使って、描き方試行錯誤して、とりあえず人と違うものをと
カマシていった。こうすりゃこんな色が出る。こんな表情になる…
次第にその色、その表情が評価されるようになった。
もっともっとと、どん欲に変わった表情が出せないかと足掻きまくった。
気付いたら、夏前のコンクールで上段に乗った。
アクリル絵具も使った。水彩も使った。インクも、鉛筆も、木炭も、マジックも、
とにかく何でも使った。
筆で描く、手で描く、水に浸ける、火を付ける、貼付ける……
さんざ色んな方法を試した。アトリエで描くのがおっくうになっていた。
狭いし、危ないし。
一日、中二階の廊下で描く様になっていった。水道も近いし便利だった。
もう、まったくモチーフを見る事は無かった。
朝来て、適当に輪郭とって、中二階直行。講評の時、初めてアトリエに戻る。
まだ気付いてなかったなぁ、どんどん自分がからっぽになってってたの。

人間てのは、周りの情報を取り入れて、周りの状況と比較して自分を大きくしていく。
それは絵もいっしょ。モチーフを自分の視点で表現しようとして、工夫したり
苦悩したりして内容を深めて行く。やってなかったんだよ、オレ。一切。
結局、色づくり・表情づくりだけ。表面は変わっても、内容は変わらなかった。
やる事はやり尽くした。もうアイデアが出てこなかった。つまらなくなった。

この年は、一次も受からなかった。そりゃそ〜さ。
出題=モチーフに全く答えてないし。本番でマスターベーション笑、滑稽すぎる。

そして何も気付かぬまま、暗黒二浪時代に突入じゃい。

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画像は2005「欲しいの。」(ギャラリーエス・東京)
展示風景。
反省たっぷり、けど形にしてみなきゃ分からんからなぁ〜。
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by g-mawatari | 2001-01-01 00:07 | 美大受験

疾走!真っ暗闇。

春が来て、弐浪(ちょっとカッコ良さげに表記)を迎えても相変わらずの
無知ぶりで、やる気も無い制作だらだらのオレ。
なんとか五月くらいまでは粘ってみたが……予備校ボイコット勃発。
ま、逃げた訳ですな。現実から。
描いてもつまんないじゃ〜ん。よくなんないじゃ〜ん。
若かりし頃って自分が正しいじゃん。根本的に間違ってても、そんな事にも
気付かずに、オレは良くなる様に努力してやってるから正しい、みたいな。
そんな客観性ゼロのオレが出した結論。
「描いても良くはならない。だから描かない。」
うっわ〜、ヒく、マジでヒく。完全に末期ですなーこりゃ。
一日行ったら2か月休む。そんな生活が始まった。

○平日朝一から「ゴジラvsデストロイア」を一人で見に行ったら、
 他の客が誰もいなくて、完全貸し切り状態。
○友達の大学に遊びに行き、レポートを書いてやる。
○友達のサークルのコンパに参加するも、イッキイッキのテンションに
 付いて行けず、寂しい思いをする。この後、野郎飲みのみ参加するように。
○小学生まで住んでいた町に行く。イメージよりも狭い道に成長を感じる。
○当時、気になってた女の子の家の前を通る。表札変わっていて、センチに。
○遊び場だった広場で、草を引っこ抜いてコガネムシの幼虫を探す。
○帰りによく行っていた公園でひとりボート(手漕ぎ)
○朝、モスでホットドッグを食うのが習慣に。
○高校剣道引退時によく行ってた喫茶店で、手塚をむさぼり読む。
 (今で言う、漫喫のはしりだったね、ここ)
○手塚に熱中しすぎ、気付いたら終電。(ここ、夜は酒も飲める)
○高校のマラソン大会のコース(約10km)を徒歩で回る。
○スーパーのゲームコーナーで、ダブルドラゴン肘撃ちクリアを繰り返す。
○近所の山にある防空ごうを探検。
○カブトを採りに行く。
○悪友と競馬
○悪友と徹マン
○悪友と徹夜桃鉄
○家にこもる。
○家にこもってる時、自分がうまく行かないのは剣道に未練があるからだと
 片足を切断する事を思いつく。ふと我に返り、自分にビビる。
○空間を理解するために、と土日の建築科に通いはじめる(謎)。
 外で描く建築写生や、立体構成は楽しかった。今はいい思い出。

ざっと思いだすだけでこんなもん。なにやってんだ、コイツ。
美術館行けよ、美術館。
油絵科にも、コンクールには行ってたんだよね。
(だから一日行って2か月休み)
そしたら、多浪の実力者が前年で出ちゃってたせいもあり、
うわべだけの技術を見せるオレの絵にも、そこそこの評価がついた。
いつもいないし、そんな末期な絵を描くもんだから講評はボロクソだったけど
それでも気付かぬ二十歳の受験は、やっぱり一次落ち。

そしてまたもや何も気付かずに、運命の三浪生活にレッツらゴーですわ〜。

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画像は2005「欲しいの。」(ギャラリーエス・東京)モチーフの
「ベロストラップ」
裏のサインスタンプがアメリカ産牛肉みたいでキュート。
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by g-mawatari | 2001-01-01 00:06 | 美大受験

そりゃそうだ。

弐浪目の受験が、筋書き通りに失敗して程なく親と話し合いがあった。
ようはこうだ。「好きな事をしてもいいが、金は出さない。」
そりゃ〜そうだ。そりゃ〜そーだよなー。
親のスネ齧って勘違い野郎に、好きな事していいってだけありがたい。

すぐに始められる仕事、しっかり金をくれる仕事。家から近い所…
参浪目の最初は、仕事探しから始まった。
(弐浪って言うとツッパってる感じだけど、参浪って、なんかやさしいね)
新聞折込で見つけた一日12000円。これがベストかな〜。
とっくにバブルが弾けちゃってるし、12000円は思の字。
20:00〜8:00かぁ。ま、背に腹は変えられんなぁ。
週6日働いて72000円。生活費に10000円引いて62000円。
4月から8月まで働きゃ1240000円。OK、いける。
さっそく面接、即採用。そうして春が始まった。

オレの職場はクリスタルグラス工場。実家の隣駅だった。
クリスタルグラス、やっぱり美術系ねー、ってとんでもない。
薩摩切り子みたいに渋いおじさんがグラス手にキュイーンてなじゃないぜ。
相手はドイツ生まれのでっかい機械。そこにグラスをはめてスイッチオン。
出て来たグラス数個をチェックして、箱詰めして、次の部署にまわす。
それを一度に3台。ちょいと休む暇もねぇ。グラスの詰まった段ボールの
重いこと。ぬれた手でずっとそんな段ボールを弄ってるから、
擦れてそのうち指紋が無くなってた。
若い人も何人かオレの後に入って来たけど、みんな一週間しないでやめてった。
じゃ、一緒に仕事してた人はって、またユニークな経歴ばっかのおじさん達で、
名前が3回かわってる(今のも本名か不明)・住んでるとこが上野、以外不明・
妻子と別れてまでバンドを続けている・多額の借金、一家離散(この人がシフトに
入っている時は、借金取りから確認電話が来るのだが、一応「まだ来てません」)
・社長を、若い頃殺そうとして花瓶で殴ったのだが、死ななかった。会社は
表沙汰にしない代わりにクビに。そのあと職を点々としながら現在にいたる。
(一番仲よくなった、一番年が近い人、っても当時43歳)
そしてリーダー各のホントに不明なおっさん。

最初はみんな、冷たかった。スキンヘッドにひげ面の若造が、出来んのかおい、
みたいな。そうだね、みんなこの仕事で生きるしか無い理由があった。
でも、オレにもこの仕事を辞められない理由がある。
なんとか頑張って続けた。ガラスが融けない様に流れ続ける研削液が肌に合わず
両腕が肘までただれた。

気付いたら、みんなオレの事「うまさん」って呼んでくれてたんだよなぁ…
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画像は「まる(欲しいの。)」モチーフの
「まるシルバーリング」
素材はシルバー925。
ベロだけ鏡面、あとはいぶしをかけてます。
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by g-mawatari | 2001-01-01 00:05 | 美大受験

脱出、そして復帰。

体力的にもきつかったクリスタルグラスバイトだったけど、
オレが一番ツラかったのは、夜勤ってことだったな〜。
オレは夜型、なんて思ってたけど甘かった。週6日は20:00〜8:00でしょ。
日が暮れて仕事に行って、ガンガン体使って朝日と共に家路。
10:00に寝て18:00に起きてまた仕事。
ほんっと、日中に動きたくて、土曜の仕事終わり後はそんまま遊びに行ったなぁ。
体力一番だから、朝、母親にチャーハンフライパンいっぱい頼んどいて、
それ完食してから眠った。とにかく炭水化物だ〜なんて。
だって、12時間のうち、休憩合計で1時間しかないんだぜ。45分と15分。
後はひたすらグラスと格闘。作業ってのは、体に染み付いちまえば考えなくても
こなしていける。今までの自分を省みる時間は充分にあった。
色は自信がある。表情作り(絵肌・マチエール)も自信がある。
様々な描き方も試した………………………あと、何を試して無い?やってない?

……あ、モチーフを見て描いて無い。アトリエで描いた事がほとんどない。
いまさらです。絵を始めて2年、やっと気付いた初夏の工場。いや〜よかった。
気付けてよかった。人よりちょい時間はかかったけど、遅い・早いは問題外。
あとはそいつを実践出来るかじゃん。大切なのは。
オレは色やマチエールは自信がある。じゃ、そのマチエールで目の前の空間を
表現出来たらヤバいんじゃん!!短絡です。
まぁ、目標なんて分かりやすい方が向かいやすいから、いいんじゃない。
後は9月の2学期が始まるまで、ひたすら働いた。
序々に重要な機械を任されるようになった。最初は1個1000円とかの
グラスを作ってる14号機辺りだったけど、最終的には1個5万オーバーの
花瓶を作っている1号機辺りを担当してた。
どうせ歯車になって働くんなら、無くなっちゃ困る歯車になってやろうと思ってた。
でも、人に「うちのグラスは…」なんて話してたから、愛着も湧いてたんだろなぁ。

工場裏の電灯に、蝉がもがいててさ、放り投げてやってもジジジッて落ちちゃう。
そろそろ解放だなぁ、なんて感じてたね。もう、あと一週間って時。
工場長が来て、辞めないでくれないっか、って。すいません、無理です。
一日だけでも、来れる日があったら来てくれ。はい。(絶対来ねーよ。)

最後の朝、太陽が上がってくんのが嬉しくて嬉しくて。
体重7kgと引替えに、1240000円と方向性を手に入れた。
おっさん達が口々に応援してくれて、あきらめるな、頑張れって。
そしてリーダー各のホントに不明なおっさんが言った一言、
「2度とこんなとこ来ちゃいけねぇぞ…」って、やっぱ優しかったね、あの人たち。

そして半年(一年半?)ぶりの予備校復帰へカモン。

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画像は2006「mail」(ギャラリーエス・東京)に展示した
「りょう(虚像)」
制作年2006
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by g-mawatari | 2001-01-01 00:04 | 美大受験

知らない人々、直前。

9月に予備校に戻ったオレを待ってたのは、まず知らない人。
いきなり長髪のガラ悪がしゃがんでるし、(こいつはすぐ消えるな)
去年は高校生だった浪人生。(現役とはしゃべらんかったからなぁ)
知らない講師……まぁ、そうだ。予備校的に同じ生徒が何年も居ちゃなぁー。

まず、今まで通りに描いてみた。久しぶりで新鮮で、それなりに楽しめる。
新しい講師はそれなりに評価をしてくれるが、オレを知っている講師は散々。
まぁ、こいつが予備校を変えようと思わなかった訳だけど。
オレのダメなとこを見て来てる人が居た方が、パッと見だけで判断しないから。
特にこれからやろうとしてる事考えたら、なおさらだよね。
ようし、明日から観て描いていくかぁ。


そっからはアトリエで描いた。筆でしっかり描いたり、絵具の遊びを使っても
目の前の状況をなんとか再現しようとした。
そこそこ目も鍛えられていったけど、最後まで苦戦した物、それが「壁」。
ようは、壁が物であるって意識が持てなかったんだよねー、ギリギリまで。
物を描くってのは、その物のなかの光や影の状態や、表情の変化を描き分ける
って作業なんだけど、壁にもあるんだよね、それ。
ほんと、それ出来なくて、同じ表情でベタぬりしてたりしたなぁ。
気付いても、まだ微妙な表情が観れて無い時は無理矢理石垣にしちゃったり。
そんなこんなで、1月入るまでそんな作業。
ある程度、自分が納得出来る位観れるようになって、講師に言った。
「またマチエールを使っていくから。暫く黙って見ていて。」なんて。
グッチャグチャになるの、分かってから。形が見えるまで放っといて欲しかった。

いや〜、グッチャグチャでしたよ、その後2か月ちょっと。
今までは、自分的にいい感じだったら良かったけど、今度は違う。
目の前の空間にならなかったら、幾らでも手を入れた。
闇雲になればなるほど、無駄な絵具の層が積み重なって色が濁った。
かっこわるいのは承知だが、見かけでごまかす以前のオレに戻る気は無かった。
間に合うかどうかなんて分からんが、行くしかないもんなーこの道。

そんなこんなで油絵の形も決まらぬまま、四度目の芸大一次の日が来ちゃったり…
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画像は2006「mail」(ギャラリーエス・東京)に展示した
「しげ(棘)」
制作年2006
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by g-mawatari | 2001-01-01 00:03 | 美大受験

3年ぶりに地に足付けて。

うぉっほ〜い、来ちまったぜ四度目の藝大一次!!
まだスイングも固まっちゃいないが、こうなったら来た球打つしかないぜ!!
鉛筆持って、消し具持って、受験票持って……
今まで頼りにしていた秘密道具は置いてった。いざって時、頼っちゃうのが恐いし。
ガチンコ勝負、もうこれしかねーよなー。

ガラ悪長髪と、約束した。
「始まったらいきなり画面叩こうぜ〜。聞こえんのかなぁー。」なんて。
画面に乗せた描画材の調子を馴染ませるため、手で叩きこんだりすんだけど
始まってイキナリ叩いたら、速っ!って周りのヤツ等ビビんじゃない?
あらあら、余裕のお二人ね、って違ったんだろなぁ。
ビビってて、緊張して、どうしようも無かったんだろなぁ。
きっとお互いの悪い緊張を、テンションを持っていける良い緊張に転換させる
自然発生的な儀式だった、と今は思ってる。
ホントに叩いたんだけど、聞こえるわけないよな〜。国技館2階席の端と端じゃ。

席に着いた。カードほどの鏡が置いてある。これ描くのか?
出題発表、「自画像」。って、こんな小さな鏡で!?
いや、これまでさんざ自画像は描いてきた。大丈夫。
鉛筆でもマチエールで空間を表現しようとやってきた。どうする?
合格倍率40数倍。一次で4〜5倍、二次で10倍。
一次で4〜5倍、5人に一人は受かる。普通描いても5人は抜ける自信はある。
…よし、ここは通りに行く。見たまま描いて、デッサン力で切り抜ける。
ペースはいつも通り、一時間にいっかい一服。
一服しに行く。長髪居る。
一服しに行く。長髪来る。一緒に描いてるとペースも似てくるもんかねぇ〜。
一服しに行く。知らないヤツにガンくれられる。ムカつく。落ち着け。シカト。
鐘が鳴った、終わり。とにかく描きあげた。予備校に帰り、飲みに行く…

一次発表の日、藝大まで見に行った。番号…ある。よし、勝負出来る。
その足で予備校に帰ってみると、たくさんの仲間たちが廊下や階段で静かになってた。
みんな、落ちてた。ゾッとした………現実。
その年、うちの予備校の一次合格者は男二人、女二人。
男の一人はオレ、もう一人は長髪だった。

さぁ、まだ油の形も決まってないのに二次直前。そして運命の発表にドン。

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画像は2006「mail」(ギャラリーエス・東京)に展示した
「こん(毒)」
制作年2006、サイズ。
反省、反省!!前進あるのみですわ〜。
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by g-mawatari | 2001-01-01 00:02 | 美大受験

解放。

空間表現ってのは、要は見え方だって気付いた。
マチエールでそいつを表現するのに、輪郭線は重要じゃない。固有色は消えた。
でもさ、どーしてもはっきりしねえんだ、画面。もうちょいだと思うんだけどなぁ。
そんな時、久しぶりに講師が声かけて来た。「ちょっと弄っていい?」了解。
「ゴルフの池ってどうだ〜?」下手だ。「オレやっていいすか。」やってみた。
正直、その「ゴルフの池」でその絵が良くなったかは疑問だ。
ただ、そいつはオレにでっかいヒントをくれた。
「ゴルフの池」ってのは、厚めの絵具で作った輪の事なんだけど、そいつは
オレの絵の中で完全に浮いていた。そうだよ、オレの絵に無かったのは
この強さだったんだよな〜。
次の日、課題は静物。オレは作業中盤に画面の中の空間2番目に深い位置に、
改良ゴルフの池を作った。その強さに負けぬ様、周りの空間を探った。
それでもなお強いゴルフの池を、終盤でギリギリまで周りに馴染ませた。
よし、後は一番前を少し強めたら………………でも、やらなかった。
今やっちゃったら、本番で出来なくなる気がしてさ。
あとは実戦で。形は出来た。芸大二次、前日の事だった。

いよっし!本番!!素描二日、油絵二日、そいつで今年は終わり。
素描のお題は……
「自分のテーマで描きなさい。テーマを言葉で書き入れなさい。」
なんじゃい、そりゃ〜!?マチエールで空間のオレには致命傷に思えた。
道具箱を探った。バイト時代に貰った?ああ貰ったグラスが2個……
そいつをセットして描き始めた。観て、描き始めた。
…なのに、なにこの違和感。スッキリしねえ……
観て描いている、確かだ。でも、これって「自分のテーマ」?
このグラスはオレのテーマか、おい!!

描いていた絵を全部消した。亀が好きなんで亀を描いた。(バカです)
でも、心は落ち付いた。マチエールで空間作りながら、亀描いた。
次の日、テーマを書き入れた。「綽々と、寂々と。」
意味は、落ち付いている様・静かな様ってとこかな。
亀でこのテーマって良くない?って自画自賛。
でもこいつは、そう望みたいってオレに対する願望だったんだろな、きっと。
ともあれ素描は終わった。完成度は低かったかもだけど、貫いた。
あとは油絵で勝負じゃい。

油絵の出題、「自分のテーマで描きなさい。」
もう迷いは無かった。仕事は決まっている。……物は無い。
形を見つけた、二次前日の静物の空間を使った。亀を描いた。
次の日、午前中に出来上がった。あと3時間ある……………
終わったのか?やっぱ描きこまないと…描こうとする。画面が壊れそうになる。
方向が変わりそうになる。廊下に出て、タバコを吸う。絵を見ない様に。
終了直前にアトリエに入る。もう一度見る。…………よし、もう描く所はない。
長髪は仕切りで隔たれた隣のアトリエだった。鐘がなった。
お互いに絵を見せあいっこした。なーにしてんだろーなぁ〜。
ずっと緊張してたんだろなぁ?そりゃするよ、するにきまってんじゃん。
この日から発表まで一週間、一番緊張した。そりゃどうにもならない緊張をした。
だって、何にも足掻けないじゃん。今やまな板の上のコイ。
家にも帰らず、ずっと飲み歩いていたなぁ、不安で不安で…

発表当日、長髪と待ち合わせて二人で観に行った(バカ・注1)
赤門の前までタクシーで行って、歩いて芸大に行った(バカだバカ)
近付くにつれ、会話はなくなり、お互い別の歌を歌ってた。
門が開いた、人がなだれ込む。合格者60人、一目で分かる。
…………あった。喜びはすぐには来なかった。安堵、開放感、それが正直……
……長髪は!?……あった!オレの番号のすぐ隣。国技館2階の端と端がさぁ。
(注1・良い子はマネしちゃダメ!片方落ちてたら、微妙すぎる空気になるよ。)
よし、袋とりに行こう。オレは書類の詰まった、一目でそれと分かる袋を、
あらかじめ用意した空のトランクに詰めた。
「長髪も入れる?」長髪は申し出を断って、手に持った。そりゃ、嬉しいさ〜。
一見、袋の無いオレに予備校関係者がパンフを差し出す。そいつを軽くかわして、
オレたちは門の前でタクシーを止めてお茶の水に向かった…


それから10数年、今も作品を作りながら今度は教える立場になっている。
もの作りやイラストの仕事もちょくちょく入って来始めた。
作品もすこしは認めてくれる人が出て来たみたい。
長髪は、元々やってた音楽に専念。バンドや自分のレーベル立ち上げて頑張ってる。
お互い三十越えて、やっと始まった、やっと回り始めたってとこかなぁって、
今度も北千住で飲むんだろうね。
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by g-mawatari | 2001-01-01 00:00 | 美大受験